生命維持に欠かせない複数の臓器が、次々と機能不全に陥ってしまう病態。対象となるのは (1)中枢神経、(2)心臓・血管、(3)肺、(4)肝臓、(5)腎臓、(6)消化器、(7)血小板などの血液凝固系、の7つの臓器や機能で、このうち2つ以上が同時または短時間のうちに相次いで障害を起こすと、多臓器不全と診断される。急性かつ進行性で、不全範囲が6~7臓器まで広がると救命はきわめて困難である。原因は様々だが、急性の全身性循環障害(ショック)、重度の熱傷(やけど)や外傷、敗血症と呼ばれる重い感染症、免疫不全などで発生しやすい。治療は原因傷病への基本治療とともに、不全臓器への薬剤投与、人工心肺など補助装置による保護や代替療法が行われる。ただし病態や治療法に関して未解明な部分が多く、多臓器不全はしばしば生命の終末像と表現される。近年では、多臓器障害(MODS ; multiple organ dysfunction syndrome)という呼称も提唱されている。