重度のけがや感染症などがきっかけで、肺が急激な機能不全に陥る病気。急性呼吸促迫症候群ともいう。主な原因には、外傷性ショック、細菌やウイルスが血液中に入って全身に回る敗血症、重症肺炎、急性膵炎(すいえん)などがあげられる。これらの基礎疾患にともない、肺の組織が損傷すると、毛細血管からしみ出た血液や体液が組織の隙間や肺胞(気管支の末端にある、ガス交換を行う場所)の内部に入り込み、酸素を取り込んだり、二酸化炭素を排出することができなくなる。この状態を急性肺水腫という。発症すると呼吸困難をはじめ、呼吸が浅く早くなる頻呼吸、ツメや唇が紫色になるチアノーゼなどの症状が見られる。腎不全や心不全、肝不全を合併することもあり、回復する見込みがきわめて低い病態とされている。治療には人工呼吸器、人工肺による呼吸と循環の管理、薬物療法などが行われるが、早期に開始しない限りは治療困難で、死亡率は50~70%にもおよぶ。とりわけ敗血症を基礎疾患とする場合では、90%の人が発病後2週間以内に死亡している。