正式名は都民の健康と安全を確保する環境に関する条例といい、東京都公害防止条例(1969年)に代わり、2000年に新たに成立した条例。それまでの東京都公害防止条例は、大気汚染や水質汚濁など公害防止・環境改善を目的として作られ、いわば1960年代型の環境悪化に対応した条例であったのに対し、環境確保条例(東京都環境確保条例)は、80年代以降に明らかになりつつある地球温暖化、オゾン層破壊、廃棄物、化学物質など、あらたな環境問題に対応することを目的に制定された条例である。条例の目的は、(1)都民の健康を守ること、(2)都民の安全な生活を確保すること、(3)将来世代に良好な環境を継承すること、となっており、旧条例に規定されていた公害対策規則に加え、事業活動で生ずる二酸化炭素(CO2)やフロンの排出抑制を求めて「環境負荷の低減」と、ディーゼル自動車対策など「自動車公害対策」を設けた。とりわけディーゼル自動車対策では排ガスに含まれる粒子状物質(SPM)の排出削減のための規制を定め、基準に満たない車両の通行を禁止するなど、国の規制を上回る厳しい内容となっている。環境確保条例は、施行後たびたび改正されており、2005年には「地球温暖化対策計画書制度」を導入し、地球温暖化とヒートアイランド現象の進行に対応する試みを実施している。
さらに大規模事業所に対して、温室効果ガスの大幅な削減を義務づけるための条例の改正案が、08年6月25日に成立した。改正条例のもっとも大きな特徴は、燃料、熱量および電気などエネルギー消費量が原油換算で1500キロリットル以上となる、約1300の大規模事業所(都内全事業所の0.2%)に対し、2010~20年度までに15~20%のCO2の削減を義務づけたことである。それにあたっては排出量取引制度を整備し、総排出量を定めて事業所の排出枠を配分し排出枠の一部の移転を認めるキャップ・アンド・トレード(cap and trade ふたをして取引をする)方式を導入し、削減できない事業所は不足分を、余分に削減できた他の事業所から購入することができる。条例では、地球温暖化対策を、国よりも早く法制化し、ここにおいても一歩進んだ厳しい内容となっている。