日本国内にはなく、国内に持ち込まれると感染流行のおそれのある新型インフルエンザを含む感染症を、検疫感染症という。検疫感染症をひき起こす病原体の侵入を防止するため、1951年に制定された法律が検疫法で、主に海外から来航する船舶と航空機を対象に検査・消毒・隔離などを行う検疫措置について定めている。検疫(quarantine)とは、出入国時に人間や動植物に行う衛生上の検査のことで、WHO(世界保健機関)の国際保健規則と検疫法に基づいて厚生労働省が行っており、入国に際しては対象となる船舶や航空機の乗員や乗客らは、検疫官による質問や診察、検査を受ける必要がある。その結果、感染患者(疑似患者も含む)や感染の疑わしい患者には隔離もしくは停留の措置がなされる。感染患者を一般人から隔てて、医療施設などに一定期間入院させることを隔離といい、一方、感染のおそれのある患者を潜伏期間が過ぎるまで、医療施設や宿泊施設に留め置くことを停留という。2009年4月、豚インフルエンザから変異したとみられる新型インフルエンザに感染した可能性のある患者に対して停留措置がとられた。しかし同年5月13日、厚労省はこのインフルエンザが弱毒性で潜伏期間が1日から7日に収まるとして、停留措置の期間を10日間から7日間に短縮すると発表した。なお、検疫の語源であるquarantinaは「40日間」を意味するイタリア語で、ペストが流行した14世紀のベネチアでは、入港に際して港外に船舶を係留して、40日にわたり監視したことによる。