1998年9月に厚生省(当時)が各都道府県に通知した「生食用食肉等の安全性確保について」で示した生食用食肉を提供する際のガイドライン。96年に起きた病原性大腸菌O-157による集団食中毒の原因の一部が生の牛レバーだったことから、食中毒の発生予防のために策定された。ここで言う「生食用食肉」とは、牛または馬の肝臓や肉のうち生食用として販売される食肉を指す。主な内容は、(1)糞便系大腸菌群およびサルモネラ属菌が陰性であること、(2)衛生基準を満たした施設で衛生基準に従って生食用として解体・加工されたものであること、(3)販売の際は生食用であること、食肉処理場名などが記載されていること、など。食肉処理場や飲食店ごとに、それぞれ加工時、調理時の注意が記されている。たとえば、食肉処理場と飲食店の場合、細菌を取り除くために生食用食肉の表面を削ること(トリミング)、トリミングや細切で使用する加工台やまな板、包丁などは専用のものを用意すること、器具の洗浄消毒は83度以上の温湯を使うことなどが指定されている。ただし、この衛生基準には法的拘束力はない。2011年4月、焼き肉チェーン店で提供された生肉のユッケを原因とする腸管出血性大腸菌O-111やO-157の集団食中毒が発生、4人が死亡した。問題のユッケで使用された生の牛肉は、生食用食肉の衛生基準を満たしていなかった。こうした問題から、厚生労働省は飲食店の実態調査を開始し、食品衛生法に基づく法規制の検討に入った。