社交不安障害は、人目を浴びる行動をする際に、悪い評価を受けたり恥をかくことへの不安から極度に緊張し、赤面、震え、吐き気、パニック発作(panic attack)などの身体症状が現れる状態を指す。かつては社会不安障害と呼ばれていたが、2008年に日本精神神経学会が名称を改定した。社交不安障害は、脳内の神経伝達物質や、不安反応を起こす「扁桃体」という脳の一部が関係すると考えられている。内向的な性格による緊張とは異なり、状況に慣れることでは不安や症状が軽減されないため、社交的場面を恐れて外出や集会を避け、やがて仕事や学業などの日常生活に影響を及ぼすようになる。パーティーや会議、試験といったさまざまな社交的場面で症状が現れるケースを「全般型」と呼び、手が震えて記帳ができないなど、特定の状況下に限られるケースを「非全般型」と呼ぶ。人前で食事ができない、自宅以外でトイレを使えないといった症状もあり、慢性化するとうつ病(depression)やパニック障害(panic disorder)など別の精神疾患との合併につながることもある。生涯有病率は1.3%前後とされている(2006年度厚生労働省研究「こころの健康についての疫学調査に関する研究」より)。治療法は他の不安障害と同様、薬物療法(SSRIなどの抗うつ・抗不安薬)と精神療法の2種類などがある。