歯並びの矯正のために抜く小臼歯や、曲がって生えたために抜く親知らずなど、何らかの事情で抜歯する健康な歯を冷凍保存しておく医療サービス。広島大学発のベンチャー企業、スリーブラケッツ社が立ち上げたもので、将来、疾患や事故などで歯を失ったときに移植することを目的としている。もともと、歯は移植が可能で、奥歯を別の奥歯の場所に移植する即時自家歯牙移植は、健康保険も使えるほどの定着した治療法である。「ティースバンク」では、抜歯した歯はただちに、アビー社の冷凍技術「CAS」によって、保存液とともに約-150℃の超低温で凍結され、この工程により、解凍後の細胞生存率は80%を超える。適応されるのは小臼歯と親知らずのみで、移植時には、前者は下顎の前歯以外の場所が、後者は第一・第二大臼歯の場所が移植の対象となり、場合によっては、本来その場所にあるべき歯の形に形状を整える。手術後は3日間ほど固定し、その後も1カ月ほどはワイヤー固定を要する。歯の根を覆い、歯と顎との生体的な結合を担う歯根膜という組織も一緒に保存するため、神経や血管も通うようになり、噛みごたえの感覚さえよみがえるという。なお、乳歯や他人の歯は適応不可で、事前の血液検査や感染症検査で問題があった場合も、このサービスは受けられない。2008年3月までに、全国で148の施設が協力歯科医院となっており、保存されている歯は約1600本、105本の歯の移植がなされている。