がん抑制遺伝子の先天的な変異が原因で、内臓に腫瘍(がん)ができやすくなる病気。アメリカ人医師Henly T.Lynchらの調査により概念が確立された。親から子へ2分の1の確率で遺伝し、遺伝すると約80%の人が大腸がんを発症する。そのため遺伝性大腸がん、または遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC hereditary non-polyposis colorectal cancer)ともいう。約50種類ある遺伝性腫瘍の中で最も頻度が高く、全大腸がんの2~5%を占めると考えられている。主な特徴は大腸がんの若年発症と大腸多発がん、多臓器重複がんの発症で、平均発症年齢は43~45歳。女性は20~60%の人が、子宮体がんを発症する。ほかに卵巣がん、胃がん、小腸がん、腎盂(じんう)・尿管がんなどのリスクも高い。こうした臨床例は国や地域、年代などで大きく異なり、遺伝子が変異しているのに発症しない人もいる。1990年、オランダのアムステルダムで国際会議が開催され、アムステルダム基準と呼ばれる診断基準が採択された。99年には一部を改正し、ガイドラインの一つとして広く使用されている。それによると、血縁者にHNPCC関連のがん患者が3人以上いて、(1)うち1人は他の2人と親、子、兄弟姉妹の関係、(2)2世代にわたり発症、(3)1人は50歳未満でHNPCC関連のがんを発症、(4)同じ遺伝性大腸がんの家族性大腸ポリポーシスではないことが判明、以上の条件をすべて満たした場合にリンチ症候群と診断される。