津波が発生した際に浸水が予想される地域で、住民が一時的または緊急に避難するための施設。沿岸部や平野部などで、地震発生から津波が到達するまでに高台や避難所へ逃げる時間的な余裕がないときなどに利用される。自治体によって整備され、民間のビルやマンション、公共施設や学校など、既存の中高層建築物を指定する場合と、新規に建設する場合とがある。2005年6月に内閣府がまとめた「津波避難ビル等に係るガイドライン」によると、構造的には1981年の新耐震基準に適合するRC(鉄筋コンクリート)造またはSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造で、想定される浸水が2メートルならば3階建て以上、3メートルならば4階建て以上とされている。内閣府による2010年3月時点の調査では、津波避難ビルを指定している沿岸自治体は21%だったが、11年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)を踏まえ、周知や整備が進みつつある。一方で、従来の想定を上回る高さの大津波の発生が今後も懸念されることから、構造要件等の見直しも検討されている。