世界的流行が懸念されている新型インフルエンザ(H5N1型)をはじめ、あらゆるインフルエンザウイルスに効く可能性をもつワクチン。国立感染症研究所、北海道大学、埼玉医科大学、化学メーカー「日油」で作る厚生労働省研究班が、2007年より研究に着手し、09年1月までに開発に成功した。従来のワクチンは、インフルエンザウイルスの表面にある棘(とげ)状のたんぱく質の形を抗体に識別させて増殖を防ぐ仕組みだが、棘の形が頻繁に変異するので、その都度、作り直す必要があった。それに対して新ワクチンは、変異しにくいウイルス内部のたんぱく質を人工合成し、そこに特殊な脂質の膜を付けて免疫反応を誘導することで、抗体にウイルスを認識、攻撃させる。マウスによる実験では、新型インフルエンザに変異する可能性があるH5N1型のほか、Aソ連型、A香港型の3種類のウイルスについて、効き目が確認された。ただし、今後は人体への副作用などを調査する必要があるため、実用化までにはあと数年かかる見通し。