体内の水分と、ナトリウム(Na)量のバランスが崩れることで起こる病気。一般には血漿(けっしょう)中のナトリウム濃度が、正常値である135~145mEq/L(メックパーリットル ; 電解質を表す当量単位)を下回った状態をいう。症状は主に神経や筋肉に現れ、軽度のうちは頭痛や傾眠、吐き気、全身倦怠感、手足のむくみなどを覚える。急激な進行で重症化すると発作やけいれん、昏睡を招いて死亡することもある。原因は腎臓の病気や下痢などでナトリウム分が欠乏する場合と、水分の過剰摂取によるものとがあり、後者は水中毒とも呼ばれる。スポーツによって誘発されることも多く、とくに近年では市民マラソン大会に参加した一般ランナーが、給水所で水を多量に飲み過ぎて罹患(りかん)するケースが急増している。2005年、アメリカのハーバード大学の研究グループが、ボストンマラソンのレース直後に参加者の血液検査を行ったところ、13%の人に低ナトリウム血症が認められ、中には重症化して走行中に倒れた人がいたことも判明した。そのため、順位を競うエリートランナーは、水分と塩分をバランスよく補給できるようなスペシャルドリンクを用意。一般ランナーについても、のどの渇きを感じてからの水分摂取や、スポーツドリンクの使用が勧奨されるようになった。