日本うつ病学会は2012年7月、学会として初めてうつ病治療ガイドラインを作成した。正式名称は、「日本うつ病学会治療ガイドラインⅡ.大うつ病性障害 2012 Ver.1」という。これまでうつ病治療のための指針としては、厚生労働省研究グループの精神科薬物療法研究会が策定した「気分障害の薬物治療アルゴリズム」が広く利用されてきたが、2003年以来改定が行われていなかった。また、新規抗うつ剤の新たな副作用問題や患者数の急増など、過去10年間で状況が大きく変化していることから、同学会は実情に合ったガイドラインを作成することを決定した。本ガイドラインは、患者を精神面で支える支持的精神療法などの非薬物療法についても触れ、うつ病治療計画の策定に重きを置いていることに大きな特徴がある。さらに、多様化するうつ病に対して通り一遍の治療が行われることを懸念し、あえて具体的な薬物治療アルゴリズムについては言及していない。治療内容は、軽症うつ病、中等症・重症うつ病、精神病性うつ病の3つに分類して体系的にまとめ、精神科専門医以外の医師にも役立つように解説されている。なお、大うつ病性障害とは、気分障害のうつ病性障害の1つで、一般にうつ病と呼ばれている。昨今、特に若い世代に多い新型うつ(現代型うつ)については、医学的根拠が定まっていないため、本ガイドラインの対象外とした。