「犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする」という、刑法第65条の規定を指し、一般に「身分なき共犯」と言われる。防衛装備品調達をめぐる防衛省の汚職事件では、2007年11月28日に、収賄容疑で前防衛事務次官とともに、その妻が逮捕された。収賄罪は、公務員という身分が犯罪の構成要件となるが、公務員ではない民間人の妻に同容疑の「身分なき共犯」が適用されたことで、関心が高まっている。この事件の他に、「身分なき共犯」が適用されたケースは、06年10月に、前福島県知事の実弟が、県の発注した大型ダム工事をめぐり、ゼネコンからわいろを受け取ったとして、前知事と同じく収賄容疑で逮捕された事件などがある。また、07年10月には、奈良の医師宅放火殺人事件を起こした長男(事件当時16歳)の供述調書を引用した単行本の発刊に関して、長男の鑑定医の一人が、調書や鑑定書を漏らしたとして、秘密漏示罪(刑法第134条)で起訴され、単行本の著者であるフリージャーナリストも「身分なき共犯」の可能性があるとして捜査を受けたが、不起訴となり、多方面からの議論をよんだ。