脳神経の一つで、表情筋をつかさどる顔面神経に障害が起こり、目や口など顔の筋肉が随意に動かせなくなる病気。脳梗塞(こうそく)など、脳の病気に伴って生じるものを中枢性顔面神経麻痺、それ以外を末梢性顔面神経麻痺という。末梢性麻痺で最も多いのは、ベル麻痺(Bell麻痺)と呼ばれるもので、循環障害、免疫異常、浮腫、ウイルス感染などが原因として考えられているが、いまだ解明されていない。性別や季節に関係なく、ある日突然発症し、通常は顔の片側だけに麻痺やけいれんを生じるのが特徴。進行すると目蓋(まぶた)や眉毛、頬、唇、舌などの動きが困難になるほか、味覚低下、聴力過敏、涙腺分泌障害などが起こることもある。末梢性麻痺で2番目に多いハント症候群は、水ぼうそうを起こす水痘帯状疱疹ウイルスの感染が原因で、発疹部位の激痛とともに、耳鳴り、難聴、めまいを伴うことが多い。どちらも投薬による治療が中心だが、軽症ならば比較的治りやすく、1~2カ月で90%近くが完治する。重症の場合は、不随意運動、けいれん、ひきつれなどの後遺症が残ることもある。とくにハント症候群は、聴力障害が完治しない例もあるので、早期の診断と治療が求められる。