集団予防接種における、注射器使い回しにより、B型肝炎ウイルスに感染したとみられる患者らが、国に損害賠償を求めた訴訟。2011年6月28日、原告団と政府が和解に向けての基本合意書に調印した。6歳以下の乳幼児がB型肝炎ウイルスに感染すると、ウイルスが一生体内から消えることなく、肝硬変や肝臓がんのリスクが高まる。本件では、北海道の原告5人が起こした裁判で、06年に国の放置責任が確定したが、その他の患者に対しては救済措置をとらなかったため、各地で提訴が相次ぎ、最終的に全国10の地方裁判所で計727人が係争する集団医療訴訟に発展していた。そこで基本合意書では、国が責任を認めて被害者に謝罪するとともに、1人あたり50万~3600万円の和解金の支払い、肝炎医療体制の整備や推進、第三者機関による真相究明、継続的な協議の場の設置、などの条項が明記された。その一方で、被害者が和解金を受け取るためには、母子感染などではなく、集団予防接種により感染したことを立証すること、と条件づけている。厚生労働省の推計では、救済対象者は全国で約45万人にのぼり、全員を救済するには今後5年間で1兆1000万円、30年間で3兆2000万円の費用がかかるとしている。