職場などにおける権力や地位の優位性を背景としたいじめや嫌がらせ。パワハラとも呼ばれる。厚生労働省は、職場のいじめや嫌がらせが大きな社会問題となっていることから、2011年7月、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を設置。現状や今後の取り組み方などの議論を開始し、12年1月30日に報告書を公表した。この報告書では、初めて職場におけるパワーハラスメントの定義を明確にし、その可能性がある行為を具体的に6つに類型化した。ここでは、職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義。ここで言う「職場内の優位性」とは、上司から部下へのもの以外にも、同僚間、部下から上司への行為も含まれている。また、職場のパワーハラスメントの行為類型は、(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)、(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)、(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)、(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)、(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)、(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)、の6類型とした。さらに、同ワーキンググループは、12年3月をめどに予防と解決のための提言を行う予定。なお、パワーハラスメントという言葉は、01年に企業や組織のハラスメント全般の相談や調査を行うクオレ・シー・キューブの岡田康子代表取締役が名付けた造語。著書の「許すな! パワー・ハラスメント」(03年7月、飛鳥新社)では、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇(はんちゅう)を超えて継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること」と定義している。