脳の線条体と呼ばれる部分の細胞が徐々に萎縮して、様々な障害が起こる遺伝性の神経難病。1872年、アメリカ人医師のジョージ・ハンチントンが、舞踏病(chorea)の一種として初めて報告した。アメリカやヨーロッパでは10万人に4~8人の割合で発症しており、日本人の発症率はその10分の1程度。発症すると細かい運動が困難になり、落ち着きがなくなる、顔や手足などが意志と無関係に動く不随意運動(舞踏運動)が起こる、物事を認識する力が低下する、といった症状が現れる。症状の強さや現れ方には個人差があるものの、いつの間にか始まり、ゆっくりと慢性的に進行した後、15~20年で全身衰弱や合併症のため死に至るケースが多い。通常は35~50歳の中年期に発症し、20歳以下の場合は、進行が非常に早い若年性ハンチントン病として区別される。根本的治療法はまだ発見されていないが、2010年、東京医科歯科大学の研究グループによって病気の原因がDNAの損傷を修復する酵素の不足にあることが解明され、新たな治療法の開発が期待されている。