ハンタウイルスによって起こる感染症の一つで、急性の呼吸器症状を示す疾患。ハンタウイルス感染症には肺症候群のほかに、ユーラシア大陸全域に発生し、発熱と腎障害を特徴とする腎症候性出血熱がある。肺症候群は1993年にアメリカ南西部で初めて流行が確認され、新種のハンタウイルスが病原体であることが判明した。これまでに、アメリカ、カナダ、南アメリカ(アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ブラジル、ウルグアイ、ボリビア)などで発生している。日本での発生は確認されていない。シロアシシカネズミ、コットンラットなどのげっ歯類が感染源で、流行地域でウイルスを保有しているげっ歯類にかまれたり、排せつ物に触れたり、排せつ物を含んだほこりなどを吸い込むことによって感染する。原則的にヒトからヒトへの感染は起こらないと考えられている。潜伏期間は1~6週間で、一般的に2週間程度とされる。発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛、おう吐、下痢などの症状に始まり、呼吸困難、酸素欠乏状態などが急速に現れ、死に至ることもある。致死率は40~50%。2012年6月から8月下旬にカリフォルニア州のヨセミテ国立公園にある宿泊施設の滞在者から6人の感染者が報告され、そのうち2人が死亡した。