細胞内に生じた異常が原因で、体や心臓の筋肉が壊れてゆく遺伝性の病気。約4万人に1人の割合で発症し、日本では難病(特定疾患)に指定されている。細胞内部には老廃物となったたんぱく質や脂肪、糖などを分解するライソゾームという小器官があり、通常は多くの分解酵素が存在しているが、それらの酵素が生まれつき働かない、または足りないために起こるライソゾーム病に属する。ポンペ病の場合は、α-グルコシダーゼと呼ばれる酵素が関係し、骨格筋、心筋、平滑筋にグリコーゲン(糖)が蓄積することで発病する。発病年齢は乳児から中高年まで幅広いが、生後1~3カ月の乳児は、筋力の急激な低下とともに肝臓の肥大が起こり、ほぼ1年以内に心不全で死にいたる。小児型や成人型では、筋力の低下はゆっくりと進行し、重度の心臓障害もほとんど見られない。ただし、呼吸不全で人工呼吸器が必要になるケースがある。早期であれば、筋肉の細胞が取り込めるよう遺伝子を組み換えた酵素製剤を、2週間ごとに点滴投与する酵素補充療法による治療が有効。日本では、2007年にアルグルコシダーゼアルファ(商品名「マイオザイム」)が承認されている。10年、ポンペ病治療薬開発の実話をもとにした、アメリカ映画「小さな命が呼ぶとき」(トム・ボーン監督、ブレンダン・フレイザー、ハリソン・フォード主演、ソニー・ピクチャーズ配給)が公開された。