水産資源学の概念として、地球規模の気候変動によって、海洋生態系の基本的構造(レジーム)が転換(シフト)すること。具体的には、気候変動に起因する海水温や海流の変化によって、魚種の組成や個体数が長期的に大きく変わる現象を指す。1980年代に川崎健東北大学名誉教授が、世界各地のマイワシ漁獲量の変動が長い周期で同調していることに着目し、学説として提唱した。その後、プランクトン、サケ・マス類、タラ類など、海洋生態系全体にわたって同様の変動が確認されている。レジーム・シフトは数十年の長周期で起きていると見られ、最近では88~89年、北太平洋中部の海面水温が平年よりも寒冷な状態から温暖な状態へ遷移し、それとともにマイワシの漁獲量が豊漁から不漁へと一転した。2010年のサンマ漁の漁獲量激減についても、レジーム・シフトの可能性が指摘されている。レジーム・シフト研究は、国際的研究組織の北太平洋海洋科学機関(PICES)や全球海洋生態系動態研究計画(GLOBEC)の中心テーマの1つとなっている。