臓器の微小血管に血栓が多発し、血液の循環や腎臓などにダメージを与える病気。血栓性微小血管症(TMA ; thrombotic microangiopathy)ともいう。原因は不明だが、O-157やO-111に代表される、腸管出血性大腸菌の感染症に続発することが多い。そのため、菌が腸管内で産生するベロ毒素(verotoxinまたはshigatoxin)が、何らかの役割を担っていると考えられている。腸管出血性大腸菌感染症にともなう発症は、3~5歳以下の小児に多く見られ、発症率は6~7%の割合。下痢や発熱の後、2週間以内に発症する。主な症状は、赤血球が壊れて起こる溶血性貧血、血小板減少症、急性腎不全などの腎機能障害で、尿量の減少やむくみ、頭痛、けいれん、呼吸困難などの症候も見られる。治療法は確立しておらず、輸液、輸血、血液透析などの支持療法を行い、腎機能の回復を待って自然治癒させる。大半の症例で経過は良好だが、まれに腎機能障害や中枢神経障害が残ったり、死亡例もある。2011年4月、富山、福井、神奈川県で発生した腸管出血性大腸菌0-111による集団食中毒で、意識不明の重症となった19歳の女性が、溶血性尿毒症症候群を発症していたことが判明した。