肺を正面から見た両外側、肺野と呼ばれる気管支の末梢部に多く発生するがん。肺胞の内側を覆う、上皮細胞(粘膜)が浸される。腺がんとは、肺がんを細分化した場合の分類名で、がん細胞自体が、唾液腺などの腺組織に似ているのが特徴。他の肺がんと違い、タバコを吸わない人でもかかる率が高く、とくに女性の非喫煙者がかかる肺がんは、ほとんどがこのタイプである。日本では発生頻度がとても高く、男性の肺がんの約40%、女性では約70%以上を占めており、ここ10年間でさらに増加しつつある。最近では、2010年8月に芸能リポーターの梨元勝、同年9月に女優の池内淳子が肺腺がんで死亡した。一般的な症状は、しつこく続くせきや喘鳴(ぜんめい)、息切れ、血痰、声のかすれ、顔や首のむくみなどだが、がんが小さいうちは症状が出にくい。やがて胸壁、胸膜が浸されたり、胸水がたまり始めると、胸痛、肩痛、呼吸困難などが起こることもある。肺野部のがんは、通常の胸部X線検査で発見しやすく、ごく早期のうちに手術すれば、治癒する可能性もある。放射線療法、抗がん剤を使った化学療法によって治すことは、がんの性質上きわめて難しい。