疾病や外傷などによって失われた生体の組織や機能を、人工的なものを体内に埋め込むことで補う医療技術や製品の総称。一般的には、失った歯を補うためにあごの骨に埋め込む人工歯根のことをいい、それを用いた歯科の治療法をさす場合が多い。金属のチタンでつくった人工歯根を土台にして、その上にセラミックスなどでつくった人工の歯を装着する。見た目は本物の歯のように自然で、入れ歯と違ってしっかりと固定されるので違和感なくかむことができ、ブリッジのように周りの歯を削って負担をかけることもないなど利点が多く人気が高い。一方で、基本的に保険が適用されない自費診療のために高額で、外科手術が必要で治療に時間がかかるなどの注意点もある。また、痛みや腫れ、化膿など、治療による健康被害の報告も増えている。国民生活センターと全国の消費生活センターが情報収集を行うPIO-NET(パイオネット)(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、2006年度以降の約5年間で343件の被害が報告されている。さらに、関係学会である日本顎顔面インプラント学会が行った調査でも、歯科医院などで受けたインプラント治療が原因で、唇やあごの神経まひなどのトラブルが生じ、後に大学病院などで再治療が行われた例が、09~11年の3年間に421件あったことがわかった。急速に普及が進む一方で、技術教育の遅れなども指摘されている。