がんや認知症などで、口からものを食べられない患者の腹部に穴を開け、カテーテルという管を挿して胃に直接栄養剤を入れる方法。そのための手術を、経皮内視鏡的胃ろう造設術(PEG ; percutaneous endoscopic gastrostomy)といい、1979年にアメリカで開発された。長期にわたる栄養管理が容易で、患者の苦痛がやわらぐ、介護者の負担が少ない、などのメリットがある。PEGの手術は5~10分程度ですみ、腹部に5~6ミリ程度の傷がつくだけで出血もほとんどない。その後は、4~6カ月ごとにカテーテルの定期交換を行う。普段、使用しない時は密栓できるため、胃の内容物が逆流することはなく、リハビリテーションや入浴にも支障はない。不要になれば簡単に除去でき、傷痕もほとんど目立たなくなる。日本では2000年代に普及し、現在は高齢者を中心に推定40万人が導入している。一方で認知症末期患者の場合、かえって体に負担をかけ、人工的延命にもつながりかねないとの指摘がある。10年に日本老年医学会が行った調査では、約4割の医師が医学的理由や患者家族の希望により、胃ろうを中止した経験をもつことが判明した。