ヒトの腸内で増殖する小型のRNAウイルスで、67種類あるピコルナウイルス科エンテロウイルスの一つ。同じ仲間には、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなどが存在する。いずれも腸周辺にとどまる場合は無症状だが、感染が進んで体内の諸組織や中枢神経系に入ると、さまざまな症状を引き起こす。そのうちエンテロウイルス71型(EV71)は、コクサッキーウイルスA16型(CA16)とともに、乳幼児の夏かぜの一つである手足口病(HFMD)の原因となる。本来は手足や口唇粘膜に発疹ができる軽い発熱性疾患だが、1990年代後半以降、東アジア地域でEV71による手足口病の大規模流行時に小児の急性死が多発、問題化している。2012年、カンボジアで3カ月間に64人の幼児が原因不明の病気で相次ぎ死亡し、同国のパスツール研究所などが患者を調査したところ、そのほとんどからEV71が検出された。EV71には予防ワクチンや抗ウイルス薬がなく、治療も対症療法で行われるため、世界保健機関(WHO)では手足口病の重篤な合併症の可能性があるとして、注意を呼びかけている。