光硬化性ハイドロキトサンゲルともいう。キトサンを主成分としたゲル状物質で、波長360nm(10億分の360m)程度の紫外線の照射によって数十秒で硬化する性質をもち、創傷治療に役立てられることが期待されている。キトサンは糖が鎖状に連なった物質であり、これに乳糖を加えて水溶性を高め、さらに3つの窒素が連なったアジド基をもたせたアミノ酸を加えるような化学修飾を施すと、紫外線を受けた際に分子間に架橋構造がかたちづくられて硬化し、ゴムのような柔軟性をもつゲル状物質に変化する。キトサンは健康食品などでもおなじみのキチン質の一種、つまりカニやエビの甲羅などに大量に含まれている成分の一つであり、自然界に豊富に存在するものではあるが、一方で精製が難しいという課題もある。しかしながら、生物由来の物質であるために生体適合性が高く、動物実験によれば、止血をはじめ、やけどや傷の被覆、組織の接着などに明確な効果を発揮し、いずれも組織の再生速度が速いうえに、皮膚治療に用いた場合には、真皮が厚みをもって形成されるために傷跡も目立ちにくくなるという。有事の大量出血にも対応できる機能性をもち、生体内での安全性や分解性も高いため、治療に用いた際の利点は大きいと考えられ、臨床実験を見据えつつ、医療用の新素材として研究が進んでいる。