緑茶(煎茶)の製造工程で、生産農家が収穫した生茶葉を工場で蒸し、熱風を当てて乾燥させながら繰り返しもんで、煎茶特有の形に整えたもの。その後、篩(ふるい)にかけて粉を飛ばし、大きさをそろえるための断裁や他の茶葉とのブレンドなどを経て、最後にもう一度水分を飛ばす「火入れ」を行って「仕上げ茶」(火入れ茶)とする。荒茶は製茶に至るまでの中間製品だが、お茶本来の味わいを楽しめることから、「生茶」などとして飲用されてもいる。2011年5月11日、神奈川県南足柄市で採取された生茶葉から国の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出され、その後、茨城、栃木、千葉、福島、群馬の生茶葉でも規制値を超えたことから、厚生労働省は同月16日、静岡、埼玉など14都県の生産地に対し、荒茶についても検査を求めた。しかし、生茶葉から荒茶への過程で、放射性物質は約5倍に濃縮されるが、通常の飲み方をすると濃度は35分の1程度(消費者庁などの発表、農林水産省では50~60分の1)に薄まることから、生産地は一斉に反発。静岡、神奈川、埼玉、栃木などが検査拒否を表明し、農水省もこれを後押しした。ところが、厚労省は抹茶などの形で直接消費者の口に入る可能性もあるとして、同年6月2日、生茶葉、荒茶、製茶のどの段階でも、500ベクレルの規制値を適用すると発表。併せて生茶葉で規制値を超えた茨城県全域と、神奈川、千葉、栃木の一部地域に出荷停止措置を指示した。その後最大の生産地静岡では、対応が二転三転した末に検査の受け入れを表明。すでに出荷済みの一番茶について、県内19の生産地において製茶で検査を行ったところ、いずれも規制値を下回った。しかし9日、業者が自主検査した静岡市藁科地区の製茶から679ベクレルの放射性セシウムが検出されたため、県は業者に出荷自粛と自主回収を要請。さらに同地区の他工場を調査したところ、14日までに5工場で規制値を上回った。一方、荒茶については、同じ19産地の二番茶を対象に検査を実施。17日現在12産地で規制値を下回った。今後6月末までに全産地の検査を終える予定。