遺伝子の異常で筋肉の組織が徐々に壊れ、筋萎縮や筋力低下を招く進行性の病気。遺伝の形式や病気の様態により、デュシェンヌ型(DMD)、ベッカー型(BMD)、肢帯型、先天性福山型、顔面肩甲上腕型などに分類される。略して筋ジスと呼ぶこともある。小児の筋ジストロフィーで最も頻度が高く、有名なのはX(性)染色体劣性遺伝性のデュシェンヌ型で、3~6歳の男児が発症し、比較的早く病状が進行する。発症率は3300人に1人とされ、人種差はなく、どの国でも見られる。発症初期には転びやすい、走れない、など下肢の筋肉に障害が現れ、やがて上半身に広がって、末期には全身に筋萎縮や筋力低下が生じる。呼吸器や心臓の筋肉が侵され、死に至るケースもある。対してベッカー型や顔面肩甲上腕型などは発症年齢が高く、進行も遅いため軽症型とされている。しかし、いずれも根本的治療法はなく、副腎皮質ホルモン投与などの薬物療法が試されている。2011年10月、神戸大学医学研究科の戸田達史教授らが、日本人にほぼ特有の先天性福山型の発症システムを解明し、遺伝子の損傷部を特殊なDNA化合物で覆う治療法を開発した。