のどぼとけのすぐ下にある、甲状腺という器官に悪性腫瘍ができる病気。もっとも一般的なタイプで、全体の60~70%を占める甲状腺乳頭がんのほか、2番目に多い甲状腺ろ胞がん、比較的まれな甲状腺髄様がん、進行が急激で全身転移しやすい甲状腺未分化がん、などの種類がある。いずれも発症すると、のどの周辺に痛みを伴わない腫れやしこりができて、声がかすれるようになったり、食べものが飲み込みにくい、息苦しい、といった初期症状が現れる。動悸、脱力感、倦怠感、体重減少などの全身症状が見られることもある。原因はいまだに不明だが、25~65歳のアジア人女性に多く、魚介類に含まれるヨード(ヨウ素)の過剰摂取、遺伝子の変化による誘発などが考えられている。幼少期に頭、首、胸部へ放射線治療を受けたり、被曝(ひばく)した人も発症リスクが高いという。治療は外科手術で患部を取り除く方法が一般的だが、がんの種類や進行度により、放射性ヨウ素を体内に入れて腫瘍を破壊するRI内用療法を含めた放射線治療、抗がん剤による化学療法、甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑えるTSH抑制療法を用いる。がんの中では進行がとてもゆっくりで、転移も少ないため、悪性度が高い未分化がんを除いて、治療後の経過は良好であるケースが多い。