熱中症の重症化にかかわる遺伝子。この遺伝子はCPT2と呼ばれ、通常は生物のエネルギー源となるアデノシン三リン酸(ATP)の産生に必要なCPTIIという酵素を作る。しかし塩基配列が1カ所だけ違うタイプが存在し、その遺伝子をもつとCPTII酵素が熱不安定型になり、40度以上の高体温下ではATPの産生力が低下する。すると脳や全身の血管を維持する血管内皮細胞が壊れ、意識障害、けいれん、多臓器不全などのリスクが高まる。この特異遺伝子は徳島大学・疾患酵素学研究センターによって発見され、日本人の13.9~19.8%が保有することも判明。インフルエンザで40度以上の高熱が続き、重症化してインフルエンザ脳症にかかった患者から、46.2%の高頻度で確認されたという研究データもある。2011年7月、東京医科大学・救急医学講座が熱中症の重症患者を解析したところ、11人中5人(45.5%)に同タイプの遺伝子が確認された。その結果、これまでは外因性疾患と考えられていた熱中症が、内因性要素でも重症化しうることが初めて示唆された。