土の中などに広く常在する破傷風菌によって引き起こされる感染症。傷口から人の体内に侵入し、菌の出す神経毒素(破傷風毒素)により中枢神経がおかされて発症する。初期では開口障害、嚥下(えんげ)困難などが見られ、進行すると顔のひきつりのほか、全身の筋肉の強直、痙攣(けいれん)などから呼吸困難となり、死亡することがある。潜伏期間は一般的に3~21日程度で、人から人へ感染することはない。治療には、毒素を中和する抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)の接種などが行われる。感染症法では、発生状況の収集により感染拡大防止を図る観点から5類感染症全数把握疾患に定められているため、診断した医師は7日以内に保健所に届け出なくてはならない。国内の患者数は毎年100人前後、死亡数は10人前後。予防接種法で、乳幼児を対象に破傷風ワクチンを含む三種混合ワクチン(DPT)の接種が推奨されている。東日本大震災の被災地では、がれきの撤去作業時にけがをして破傷風を発症する事例が報告されており、国立感染症研究所感染症情報センターなどが注意を呼びかけている。