急病など、もしものときに備えて、本人確認のための写真や、持病、かかりつけ医、服薬などの情報を記入したシートを入れておく長さ約20センチのプラスチック製の筒状容器。健康保険証のコピーや家族の連絡先なども入れることができる。用意したキットは冷蔵庫に保管しておき、冷蔵庫の扉や玄関の内側などにキットが冷蔵庫内にある旨を知らせるシールを張っておくというもの。高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯が増えるなか、災害や急病で駆けつけた救急隊員が迅速に対応できるよう、高齢世帯や障害者のいる家庭などにキットを無償で配布する自治体が増えている。全国で初めてキットを導入したのは東京都港区で、2008年5月に希望する高齢者や障害者に無償配布した。こうした医療情報を冷蔵庫に保管するという取り組みは、アメリカのポートランド市で20年ほど前から実施されており、一定の成果を上げていた。これを明治学院大学の岡本多喜子教授が07年のWHO会議に参加した際に知り、港区に提言したことから始まったと言われている。冷蔵庫はどこの家庭にもあるので救急隊員が探しやすいこと、本人がシートに記入するので、最新の情報への書き換えも容易であることなどのメリットもある。11年11月、宮城県気仙沼市は10年から試験的に導入していたキットを、市内全域の高齢世帯5826世帯に広げて配布することにした。仮設住宅などで知人と分かれてしまった高齢者も多く、地域の見守り体制を強化するのが狙い。