動脈硬化や血栓による冠動脈の狭窄や閉塞、血管のけいれんなどによって血液の流れが悪くなり、酸素や栄養が十分に心臓の筋肉(心筋)に行きわたらなくなることで起こる心疾患の総称。狭心症と心筋梗塞の二つが代表的。狭心症は、運動や何かの動作をしたときに起こる労作性狭心症と、冠動脈のけいれんなどによって安静時に起こる冠れん縮性狭心症の二つに大別される。いずれの場合も、胸や背中に痛みや圧迫感を生じるが症状は一時的で、痛みは数十秒から15分くらいで自然に治まる。狭心症が進行し、狭くなっている冠動脈に血栓ができて血管が完全にふさがると、心筋梗塞を起こす。胸を締め付けるような激しい痛みが突然起こり、15分から数時間続く。心筋が徐々に壊死し、治療が遅れれば1~2時間で死に至ることもある。虚血性心疾患の基本的な治療法は症状の改善を図る薬物療法で、状態によっては狭くなっている血管を広げるカテーテル療法や、血液の通り道を新たに作る冠動脈バイパス手術などが行われる。この疾患は生活習慣病であり、喫煙、肥満、精神的ストレス、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などが危険因子とされている。患者や死亡者は、40歳代を過ぎてから、加齢とともに急速に増加する傾向にあり、虚血性心疾患を含む心臓病は、日本人の死亡原因の第2位となっている。