TFPTとは、光を受けることで電流を発生させ、同時に処理を行うフォトトランジスタを薄い膜状にしたもの。人工網膜の実現のために、これを配列(アレイ)させた素子が研究されている。網膜とは、目から入った光を受け取って、その情報を神経に伝える器官で、眼球の後ろ側にある。昨今、網膜の損傷によって失明した患者に光を取り戻させる人工網膜が、微細技術の確立にともない実現しつつある。龍谷大学の木村睦准教授らのグループは、セイコーエプソンとともに、プラスチックなどの“曲げられる基板”の上にTFPTアレイをかたちづくる技術を開発。2007年9月12~14日に東京国際フォーラムで開催された大学見本市「イノベーション・ジャパン2007」にて発表した。基板を曲げられるため、目の形に合わせて、素子を湾曲させることが可能となる。出展されたものは試作品のため、1画素当たり200ppi(pixel per inch)のTFPTをガラス基板上に10画素×10画素で配列したものだが、光の分布を検出する基本性能に問題はない。網膜はもともと、1万ppiにも相当する一部の高解像度領域を中心に、低解像度領域が取り巻いた構造となる。今回の技術成果は、基板を曲げられるという強みを生かし、中心部ではなく、湾曲している周辺の低解像度領域の役割を担うことを前提としたもので、1000ppiを次の目標にしているという。