脳の活動を読み取り、その情報によって機器を操作する試みをブレイン・マシン・インターフェース(BMI:brain machine interface)という。(1)頭皮と頭蓋骨を貫いて大脳皮質に直接電極を差し入れ、脳活動のクリアな信号を得る方法と、(2)脳の神経活動などを調べるfMRIや赤外線センサーを用いて、(1)ほどクリアではないが、肉体を傷付けずに信号を得る方法があり、ともにロボットハンドを動かすような実績をもつ。日本の国際電気通信基礎技術研究所(ATR)とアメリカのデューク大学は、科学技術振興機構基礎研究事業のもと、インターネットを通じて遠隔的にBMIを行う実験に世界で初めて成功。2008年1月15日に発表した。実験は、デューク大学で(1)の方法を施したサルをウオーキングマシンの上で歩かせ、その脳から得た信号をロボット用に同時変換し、ATRに伝送。その信号を受信したヒューマノイドロボットが歩行動作を再現しつつ、目(カメラ)に映る映像をサルの元に送信、双方向のリンクを実現するもの。実験に用いたロボット「CBi(Computational Brain-interface)」は、ATRとアメリカのカーネギーメロン大学などが開発した等身大のロボットで、可動個所が多く、なめらかに動く。本来、BMIは脊椎を損傷して半身不随になった患者の運動機能再建などを目指すものだが、脳の信号を遠方に伝送し、リアルタイムで「自分の分身」と同調しながら操作できるなら、その用途は格段に広がる。