千葉県いすみ市で発見された新種の種子植物。2009年、千葉県立中央博物館(千葉市)の調査ボランティア野口昭造が同市内の里山で発見。当初絶滅危惧種のスズカケソウと考えられたが、千葉大学大学院園芸学研究科の上原浩一准教授らの研究チームと、同博物館の共同研究により、新種であることが判明。自生地の名を採ってイスミスズカケと名付けられた。スズカケソウの名は、斜面から長く垂れ下がる茎を挟んで交互に生える葉の付け根に、紫色の可憐な花を房のように咲かせる様が、山伏の法衣「鈴懸(すずかけ)」の肩から下げる「結袈裟(ゆいげさ)」の房に似ていることに由来する。このイスミスズカケも、咲き方や花の色が似ているが、葉の形が丸みを帯びた卵形のスズカケソウに対し、ハート形で表面の毛が短く少ないうえに葉脈のパターンも違い、花も少し小さかった。そこでDNAによる解析や自生地の視察などを加えたところ、同じクガイソウ属ではあるが、これまで知られていない新種と判明した。植物調査の進んだ日本国内で、新種の種子植物が見つかることは非常に珍しく、13年2月21日発行の日本植物分類学会の英文学術誌に論文が掲載された。スズカケソウの仲間は多くが絶滅に瀕しており、このイスミスズカケも現時点では1集団約100個体しか見つかっておらず、論文発表前の段階ながら、すでに12年8月28日発表の環境省「第4次レッドリスト」では、「近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」として絶滅危惧IB類(EN)に分類されている。