宇宙に23%存在する、質量密度は高いが、直接見ることのできない物質。日米欧のチームはアメリカのハッブル宇宙望遠鏡のCOSMOSプロジェクトのもとで連携し、この暗黒物質の立体的な分布を解明、2007年1月、科学誌「nature」にその成果を発表した。ハッブル宇宙望遠鏡ではしし座方向を観測し、暗黒物質の大きな重力が背景の天体像をゆがませてしまう効果に基づいて、その存在を計測。これに並び、ハワイのすばる望遠鏡では、その周辺領域の約50万個の銀河までの距離を精査。双方の観測結果から、奥行き約80億光年、縦横約2.7億光年の範囲における暗黒物質の空間分布が解明された。その分布の様子は銀河の集まり具合とも合致しており、暗黒物質がその重力で塵やガスを引き寄せ、銀河の形成や進化に影響していることも確認された。一方で、この暗黒物質の正体も先端の研究課題である。宇宙には、我々の身近にある素粒子と対をなしながら、自転の性質だけがわずかに異なる超対称性粒子が存在すると理論的に予想される。そうした粒子の数種が混合したニュートラリーノという物質は暗黒物質と同様の性質をもち、宇宙全体に存在する質量も同程度と推測されるため、暗黒物質の正体と考えられている。ニュートラリーノは物体をすり抜ける際にごくまれに原子核に作用するため、そのわずかな反応から検出を試みようと各国で研究が進んでいる。