世界中の電波望遠鏡を高速インターネットでつなぎ、あたかも地球規模で構成する仮想的な電波望遠鏡。ガリレオ・ガリレイが、手作りの望遠鏡で初めて宇宙を観察した1609年から、400年目に当たる2009年を節目に定められた世界天文年2009(International Year of Astronomy 2009)で実施される記念イベントの一つ。複数の電波望遠鏡を使って天体観測をすることを電波干渉といい、電波望遠鏡の間隔が大きいほど、細かな観測が可能である。しかしかつての同軸ケーブルでは、100kmを超えるデータの伝送が不可能であったことから、各電波望遠鏡が観測した信号データを記録した磁気テープを1カ所に集めて解析処理を行うVLBI(Very Long Baseline Interferometry 超長基線電波干渉計)という技術が発明された。現在ではインターネットの発達により、電波望遠鏡の観測データは受信と同時に送信され、リアルタイムで処理することが可能なe-VLBI(electronic VLBI)技術が研究されている。このたび世界天文年の観測イベントとして、09年1月15~16日にかけて世界各国にある17基の電波望遠鏡が参加する、史上最大規模の国際的なe-LVBI観測のデモンストレーションが行われた。参加したのは、地球外知的生命体探査(SETI)プロジェクトで知られ、世界最大の電波望遠鏡(304m)を持つアレシボ天文台(プエルトリコ)を始め、ヨーロッパVLBI連合研究機構、日本では情報通信機構(NICT)鹿島宇宙通信研究センターなどである。