アメリカのベンチャー企業Terra Power(テラパワー)社が基本設計を進める次世代原子炉の一形式で、進行波炉とも呼ばれる。原子炉とは、ウラン235やプルトニウム239などの核分裂性の元素が中性子を吸収することによって分裂し、高いエネルギーとさらなる中性子を発生させ、この反応の連鎖からエネルギーを得る装置である。しかし、ウラン235は天然のウランの中に0.7%しか存在せず、これを3~5%の濃度まで濃縮する必要がある。こうして得た燃料は原子炉の中で過剰な核分裂を起こすこともあるので、燃焼を抑制する制御棒という装置でつねにコントロールしている。一方で、燃焼を終えた使用済み燃料はその処分に困難を極めており、またウランの濃縮過程で発生する膨大な劣化ウランも一部が軍事用途で用いられているほかに使い道がない。対してTWRは、たまる一方の劣化ウランを燃料に用いることができ、長期間にわたり燃料の交換を必要とせず、しかも高い発電効率を得られる可能性も秘めている。TWRでは、六角形の断面をもつ細長い容器数百本の中に劣化ウランを収容し、(1)少量のウラン235を使っての核分裂反応を引き金にして中性子を発生させ、(2)その中性子が劣化ウランの原子核に作用し、いくつかのプロセスを経て、核分裂を起こすプルトニウム239に変換、(3)これを燃焼するという反応を連鎖させていくものとなる。劣化ウランを燃料に変換しつつこれを燃焼していくという「波」は、容器の中で1年当たりわずか1cm程度ずつゆっくりと進行していくため、核分裂反応が一気に起こることもなく、制御棒でコントロールする必要もない。容器の材質や基本設計上の技術的課題はあるものの、理論的には、燃料の交換をすることなく200年におよぶ燃焼を続け、ここで発生する熱量は従来の原子炉の330℃を大幅に上回る550℃に達するため、発電効率を大きく上げることも期待できる。2010年3月23日、Terra Powerと東芝の間でTWRの技術情報の交換や協力が検討されていると新聞報道され、Terra Powerにはマイクロソフトのビル・ゲイツ会長が参画していることもあり、各メディアでいっせいに取り上げられた。しかしながら、東芝は具体的な決定にはいたっていない旨を発表している。なお、TWRの技術概念は、東京工業大学の関本博教授が独自に考案したCANDLE炉のそれときわめて近い。