ともに、東京大学大学院の野崎久義准教授をはじめとする日米共同チームが発見した、雄(オス)と雌(メス)という性別の差異のはじまりを決定付ける遺伝子、あるいは遺伝子群。OTOKOGIはオスに特有の遺伝子で、プラスとマイナスという原始的な性をもつ緑藻類のクラミドモナスと、その近縁でメスとオスに性的に進化したボルボックス・プレオドリナとの遺伝子解析によって確認された。従来から、プラスの性にMID(minus dominance)という遺伝子が作用すると、マイナスの性が派生することが知られている中、ボルボックスのオスの性染色体領域にはMID遺伝子と共通の祖先をもつPlest MIDという遺伝子があることがわかり、これがオスの性を決定付けていると考えられるため、OTOKOGIとの命名と併せて2006年12月19日に発表された。当時、遺伝子の解析が進んでいる高等動物においては、メスに特有の遺伝子が見つかっていないか、まれであることもあり、「メスは性の原型であり、オスはその派生型である」とする従来の定説を支持する成果と報じられた。ボルボックスの性染色体に存在する遺伝子は進化速度が速く、探索が難しいために知見もなく、同チームはその後も独自の手法を駆使して性染色体領域の遺伝子解析を進めたところ、メスに特有の遺伝子を5個発見。定説を覆し、メスにも、性の原型からメスらしさを獲得してメスになるための遺伝子が働いていることを確認した。野崎准教授はOTOKOGIの発見以降、メスに特有の遺伝子が発見された場合は、女優の藤純子(現・富司純子[ふじすみこ])の主演映画「緋牡丹博徒」シリーズを由来として、HIBOTANと名付けることを公言しており、10年4月16日に研究の成果と、ここで発見した5個の遺伝子群をHIBOTAN遺伝子群と命名したこと、そして同時にオスに特有の遺伝子も新たに9個発見したことを発表した。