正式名称「科学技術の振興に関する年次報告」。1995年11月に施行された「科学技術基本法」第8条に基づき、毎年政府が科学技術の振興に関して講じた施策について、国会に報告するもの。2012年6月19日、12年版科学技術白書(平成23年度版)が閣議決定され、文部科学省ホームページに掲載された。全体は2部構成で、第1部を「強くたくましい社会の構築に向けて~東日本大震災の教訓を踏まえて~」と題した特集に充て、東日本大震災および福島第一原発事故への政府の対応を総括。今後の科学技術イノベーション政策が進むべき方向性についても提言を示した。これによると、震災で役に立たなかった研究として、「マグニチュード9クラスの地震を可能性さえ想定できなかった地震・津波研究」「甘い原発事故の災害想定と対応策」「原発事故現場で使えなかった日本製ロボット」などを挙げ、科学技術の限界を指摘。また、放射性物質の拡散や人体への影響について、情報開示の遅れや専門家の意見がバラバラで、社会を混乱させるなど、「科学者や技術者に対する国民の信頼が大きく低下した」ことを明記した。これを裏付ける資料として、文部科学省が国民約1600人を対象に毎月実施している意識調査の推移等を挙げ、「科学者の話は信頼できる」とした人が、震災前(10年10~11月)の約85%から震災後(11年4月)は約41%に急落。また「研究の方向性は専門家が決めるのがよい」とした人は、震災前の約79%から約45%に激減したのに対し、科学者の方では、11年7月の時点で「国民から信頼されている」が約44%で、「信頼されていない」の約39%を上回り、専門家は「事態を深刻にとらえていない」と評している。