大阪大学産業科学研究所の能木雅也准教授らの研究グループが開発した、木材パルプを原料とする紙の太陽電池のこと。2012年9月の高分子学会・第61回高分子討論会で発表した。製造工程は次の通り。まず、紙の原料である木材パルプ繊維から、幅15ナノメートル(ナノは10億分の1)という繊維構造の最小単位であるセルロースナノファイバー(バイオナノファイバー)を取り出し、乾燥工程などを経て、紙でありながら透明なシートを作成。そこに幅100ナノメートルという、極めて細い銀のナノワイヤを塗布すると、電気の流れる基板ができる。さらに、非シリコン系の有機太陽電池回路を印刷することで、発電能力を持つようにした。この「太陽光発電する紙」の発電効率は3%と、一般的な太陽光発電パネルの10~20%よりは劣るものの、紙ベースの有機太陽電池としては世界最高値だという。特徴は、厚さは1ミリ以下と極めて薄く軽量で、さらに丸めたり折りたたんだりできること。既存のガラスやプラスチックの基板上に作る太陽光電池のように、重く割れやすいという欠点を回避できる。さらに、紙製のため処分も容易で環境への影響も小さい。実用化した際の製造コストは、従来のガラス基板のものと比べて10万分の1程度になるといい、数年後の実用化を目指している。