太陽光がもたらす熱をカットする塗料。地上に届く太陽光のおよそ半分は赤外線であり、その大半は近赤外線という領域にある電磁波である。赤外線は、目に見える光の中で最も長い波長をもつ「赤」よりもさらに長い、約0.7~1000μm(100万分の1m)の波長をもち、物体に浸透して、そのエネルギーで分子や原子を振動させ、熱を生み出す性質がある。夏場のアスファルトやコンクリートが、体感温度よりずっと高い温度になるのも、この効果による。そこで、微細な粒子などを塗料に混ぜ、赤外線を効果的に反射させる特性をもたせた塗料を、一般に遮熱塗料という。電磁波は自分の波長より小さなものに当たると、反射しやすくなるため、赤外線、とりわけその大半を占める近赤外線の波長(約0.7~20μm)よりも小さくしたセラミックスの粒子などを反射材に使う。各塗料メーカーから、さまざまな遮熱塗料が製品化されており、中には近赤外線を70%以上反射させるものや、赤外線以外の要因でたまった熱を逃がしやすい放熱性をあわせもつ製品も登場した。こうした塗料を塗った屋根やコンクリートは、真夏の炎天下において、未塗装のものと比べて20℃前後も低い温度になるという。また一方、炎天下で熱せられた建築物は、内部の鉄筋や鉄骨が熱膨張によって体積を増加させるために、コンクリートに亀裂を生じさせることがあるが、この塗料のもう一つの効果は、このようなダメージを低減させることにある。