南極に高精度のレーダーアンテナを設置し、大気の状態やオゾンホールなどを精密に観測する世界初のプロジェクト。南極昭和基地大型大気レーダー計画ともいう。国立極地研究所、東京大学を中心に国内8研究所と9大学が参加し、2011年1月、第52次南極地域観測隊が建設を始める。アンテナはモノスタティックパルスドップラーレーダーと呼ばれるもので、中心周波数47メガヘルツのVHF波(超短波)を使用。完成後は、直径160メートルの敷地に、1045基のアンテナが並ぶ。これにより、地上から高度500キロメートルまでの大気の流れを1分おきに観測できるほか、放射冷却によって大陸斜面を強風が吹き降りるカタバ風、オゾンホールの形成に関係する冬の極成層圏雲、オゾンホールと同じく、人間活動が原因で出現するようになったといわれる夏の極中間圏雲(夜光雲)、太陽からのプラズマ粒子で大気が発光するオーロラなど、極域でしか見られない大気現象の観測を行う。将来的には、北極のEISCATレーダー、インドネシアの赤道大気レーダー(EAR)などと連携して観測網を作り、地球規模での大気循環や気候変動の予測にも役立てる。