100億光年(1光年は約9兆5000万キロ)以上離れた初期宇宙から、数秒間ないし数十秒間だけ大量のガンマ線が飛来する宇宙最大の爆発現象。重い星が超新星爆発を起こしてブラックホールが誕生するときに見られる、中心からほぼ光速(秒速30万キロ)で噴き出すジェット状のエネルギーに由来すると考えられているが、発生のメカニズムは長年の謎だった。そうした中、金沢大学、山形大学、大阪大学、理化学研究所などの研究チームは、ガンマ線の偏光(polarized light)を検出するという異例の方法によって、そのメカニズムを解明し、2011年9月18日に発表。観測に際しては、直径・高さとも17センチ、重量3.7キロほどのガンマ線バースト偏光検出器「GAP(Gamma-ray burst Polarimeter)」を開発し、これを10年5月に打ち上げられた宇宙ヨット「イカロス(IKAROS)」に搭載した。ガンマ線は高いエネルギーや強い透過力をもつが、光と同じく電磁波(electromagnetic wave)の一種で、電場と磁場が合わさって振動しながら伝搬する。たくさんの電磁波を観測したとき、総合的に電場の振動がそろっていると「偏光している」と表現するが、本来電場の振動はバラバラで、強い磁場の影響を受けると振動がそろえられて偏光にいたる。同チームは、10年8月26日に検出した強いガンマ線バースト「GRB100826A」の偏光の状態を解析し、(1)ブラックホールから放出されたジェットの中には、数万ガウスの規則的な磁場が存在していること、(2)電子や陽電子が強い磁場のせいで本来の運動を曲げられ、そのエネルギーの一部が電磁波として放出されるシンクロトロン放射(synchrotron radiation)が起こり、強いガンマ線が作られること、(3)ガンマ線バーストの偏光状態は短時間に変化するので、ジェットの中には強いガンマ線を作り出す「ホットスポット」のような領域が点在していて、それぞれで磁場の向きも異なっていることを突きとめた。