炭素が連なって筒状になった素材をカーボンナノチューブという。軽くて強靭な材料特性をもち、炭素の配列具合で電気伝導率が変化したり、内部に他の物質を取り込むことで新たな機能を見せたりと、1991年の発見以来、新しい知見が続々と報告されている。2007年1月22日、首都大学東京と独立行政法人産業技術総合研究所のグループは、カーボンナノチューブにおいて交換転移という現象を見いだしたと発表した。この現象は、水分子を詰めたカーボンナノチューブをガスの中に置いて圧力や温度を調整すると、水分子とガス分子が入れ替わるもので、ガスの種類ごとに圧力と温度の条件が異なる。交換転移を起こしたカーボンナノチューブは、その反応を導いた特定のガスだけを通すようになるので、分子を選択するバルブとして機能する。また、交換転移の際に、カーボンナノチューブの電気抵抗が変化することも判明し、この変化を受けて作動するガスセンサーにも応用できる。