防衛省技術研究本部・先進技術推進センターの佐藤文幸技官が開発した、直径42センチの球状フレーム(骨組み)で覆われている遠隔操作型の小型飛行体。本来、飛行する物体は着陸時に垂直の姿勢を保って接地しなければならず、この制御がうまくいかなければ転倒してしまう。そこで、同技官は、機首に大きなプロペラを搭載した飛行機形の本体と、その周囲を球状のフレームで囲むことを発想。通常の飛行はもとより、ヘリコプターのように垂直に浮上することや空中に静止するホバリングも可能となる新しい飛行体を開発し、2010年11月9~10日に開催された「防衛技術シンポジウム2010」にて発表。「球形飛行体」または「球形飛行物体」といった呼び名でも報じられた。球形であるため、着陸態勢の厳密な制約から解放され、垂直に接地できなくても、自然に転がってダメージを回避したり、そのまま地上を回転移動したりする動作も可能となる。設計段階で断念した1号機からはじまり、機体の形状やフレームの径を変えるなど工夫を凝らしながら性能の検証を続け、今回発表されたものは7号機となる。本来、飛行体は重心を前方に置くのが定石だが、この機体は重心を後方に置くことで、プロペラの方向を常に水平よりも上向きにして、浮力と推進力を同時に得るような飛行態勢をとることになり、地面を転がっても「起き上がり小法師」のように自然に垂直の姿勢をとれる。カーボンやスチレン、ペットボトルなどを用いて製作したもので、製作費は約11万円という。カメラのほかマイクロコンピューターを2機、姿勢を感知するジャイロセンサーを3機、姿勢を制御するダクト翼や舵面をもち、重量350グラム、最高時速60キロ、飛行時間はホバリング時で8分間となる。屋内・屋外を問わず、対テロや災害派遣に際しての捜索や情報収集に対応でき、今後は自律機能の追加や、劣悪な状況下での使用を想定した耐環境性の強化などが課題となっている。