生物がもつ「体内時計」の機能は、ある遺伝子の領域がネットワークをかたちづくることで成り立つもの、と考えられてきた。理化学研究所や九州大学などの研究チームは、ショウジョウバエを使って、より深い体内時計のメカニズムに迫り、その成果を2007年6月19日に報じた。ショウジョウバエを用いたのは、ほ乳類の体内時計とも共通のメカニズムをもつと考えられるうえ、すでにゲノム配列の解読が終わっており、遺伝子の実験に用いやすいため。チームは、ショウジョウバエの頭から、24時間の周期で何らかの働きをみせる遺伝子を200個ほど探り出し、最新の遺伝子操作技術を駆使して、それらを一つずつ壊していった。実際に体内時計にかかわっている遺伝子が壊されれば、体内時計が誤動作し、お互いの関係が判明する。こうして発見された遺伝子は、他の体内時計遺伝子までも制御する中心的な働きを示しており、それが作り出すたんぱく質は「Orange domain」と呼ばれる領域にあった。そのため、アンソニー・バージェス原作の小説をスタンリー・キューブリック監督が映画化した「時計じかけのオレンジ」にかけて、この名が付けられた。