特殊な培養皿を使い、細胞をシート状に培養したもので、機能の低下した臓器に張りつけ、その機能をサポートする役割を目的とする。臨床が始まっている角膜や、動物実験がなされている心筋(心臓の筋肉)以外にも、さまざまな臓器での利用が目標とされている。もともとは、移植を施す臓器と同じ種類の細胞を培養する手法が主であった。しかし、この分野のさきがけでもある大阪大学医学部附属病院と東京女子医科大学病院のチームは、心臓病患者の太ももの筋肉から作った細胞シートで、世界で初めて、心臓の機能を回復させる再生医療に成功した。大阪大学医学部附属病院に入院していた50歳代の患者は、「拡張型心筋症」を患っており、補助人工心臓を装着し、心臓移植を要するほどの重症であった。チームはこの患者の太ももの筋肉を、2007年3月末に10gほど切り取り、そこに含まれる筋芽細胞を用いて、約2カ月かけて直径4cmほどの細胞シートを25枚作製。同年5月末、心臓の表面の、血液を全身に送り出す左心室の部分に3~4層に重ねながら、約20枚の細胞シートを張りつける手術を行った。その後、同患者の心機能は急速に回復、同年9月には人工心臓をはずせるまでになり、12月20日には退院を果たした。細胞シートが心筋になったのではなく、機能をサポートする物質を出していることが考えられるという。