超電導モーターで走行する電気自動車で、住友電気工業が世界で初めて試作し、2008年6月12日に公開した。同月19~21日に北海道の札幌ドームで開催された、「北海道洞爺湖サミット記念 環境総合展2008」にて「超電導EV-1」の名で展示され、同型の「EV-2」では試乗も行われた。超電導とは、金属などの導電体(電気を通す物質)を極めて低い温度まで冷やしていくとき、ある時点で電気抵抗がゼロになる現象のことで、学問の分野によっては「超伝導」とも表記する。最近では、-140℃程度で超電導の状態になる高温超電導体も開発されている。一般にモーターは、導線を大量に巻き付けたコイルが電磁気の作用で磁力を発し、これを利用して軸の回転運動を得るものである。しかし本来、すべての導電体には電気抵抗があり、そのせいで損失するエネルギーは熱に変わりつつ、さらに抵抗を増大させるため、大量の電流を流すことは難しかった。その点、超電導状態の導線であれば、電気抵抗がなくエネルギーの損失はゼロであるから、わずかな電圧でも大量の電流を流すことができ、大きな回転力を得ることもできる。この試作車に搭載された超電導モーターのコイルには、ビスマス系超電導線が使われており、併設したタンクに納めた4リットルの液体窒素がこれを冷却し、約2時間の超電導状態を保つ。試作車では、電圧は144V(ボルト)、電流は性能上限の半分以下となる40A(アンペア)に制限しているが、回転力が強く、変速機構にも対応できる。